日銀は長期金利を直接誘導している?
かつて日銀は、イールドカーブ・コントロールと呼ばれる政策によって、10年国債利回りが一定の範囲で推移するよう国債を買い入れていました。
しかし、日銀は2024年3月の金融政策決定会合で、マイナス金利政策とイールドカーブ・コントロールを終了しました。現在は、短期金利の操作を主な政策手段としています。
したがって、2026年時点では、以前のような「10年国債利回りを0%程度にする」という固定的な長期金利の誘導目標はありません。長期金利は、原則として金融市場で形成されます。
2026年の日銀政策と長期金利
本記事のファクトチェック時点である2026年7月31日午前9時48分には、7月30~31日の金融政策決定会合の結果は日銀サイトへ掲載されていませんでした。
確認できた直近の金融市場調節方針は、2026年6月16日の決定です。日銀は、無担保コール翌日物金利が1.0%程度で推移するよう促す方針を決定しました。
日銀は、経済・物価・金融情勢に応じて、今後も政策金利を引き上げる可能性があるとの方針を示しています。ただし、利上げの時期や幅はあらかじめ確定しているものではありません。
日銀は国債買入れを段階的に減額
日銀は、長期国債の買入れ額を段階的に減らす計画も示しています。2026年6月に決定された計画では、月間の長期国債買入れ額を次のように減らす予定です。
| 期間 | 月間買入れ予定額 |
|---|---|
| 2026年4~6月 | 2.7兆円程度 |
| 2026年7~9月 | 2.5兆円程度 |
| 2026年10~12月 | 2.3兆円程度 |
| 2027年1~3月 | 2.1兆円程度 |
| 2027年4月以降 | 2.0兆円程度 |
日銀による買入れが減れば、国債市場に対する強い買い需要が弱まり、金利の上昇要因となる可能性があります。ただし、民間投資家の需要、国債発行額、景気、物価なども影響するため、買入れ減額だけで金利の方向が決まるわけではありません。
日銀は、長期金利が急激に上昇する場合には、国債買入れの増額や固定利回り方式の国傷取引など、機動的な対応を行う可能性も示しています。
長期金利の今後の見通し2026年版
長期金利の将来水準を正確に予測することはできません。金利は、市場参加者の予想が変化するたびに動くためです。
住宅金融支援機構が2026年6月に掲載した資料では、複数の調査機関による新発10年国債利回りの予測を集計し、2026年度平均は2.64%、予測範囲は2.48%~2.88%とされていました。
2027年度平均は2.75%、予測範囲は2.50%~3.08%でした。ただし、これは複数機関による予測の集計であり、住宅金融支援機構や政府が将来の金利を保証するものではありません。
また、年度平均の予測値と、その時点の市場金利は性質が異なります。2026年7月30日の2.801%が年度平均予測の2.64%を上回っていても、直ちに予測が外れたと判断することはできません。
長期金利がさらに上昇する要因
- 物価上昇が長期化する:将来受け取るお金の実質的な価値が下がるため、投資家が高い利回りを求めやすくなります。
- 日銀が追加利上げを行う:将来の短期金利予想が上がり、長期金利にも上昇圧力がかかる可能性があります。
- 日銀の国債買入れが減る:国債の大口購入者による需要が弱くなる可能性があります。
- 国債の発行が増える:供給増加に対して十分な買い需要がなければ、価格下落と利回り上昇につながります。
- 海外の長期金利が上がる:海外債券との利回り比較を通じ、日本国債にも上昇圧力がかかることがあります。
- 円安や輸入物価上昇が進む:物価上昇への警戒から、利上げ予想が強まる場合があります。
長期金利が低下する要因
- 物価上昇が鈍化する:日銀の追加利上げ観測が弱まる可能性があります。
- 景気が悪化する:安全性を重視する資金が国債へ向かい、国債価格が上昇する場合があります。
- 株価が大きく下落する:投資家がリスク資産を売り、国債を買う動きが強まる可能性があります。
- 海外金利が低下する:日本国債の相対的な魅力が高まることがあります。
- 日銀が国債買入れを増額する:急激な金利上昇を抑えるための対応が行われる場合があります。
1つの予測だけで判断しない
金利予測は、物価、賃金、政策、為替、海外経済などに関する前提を置いて作られます。前提が変われば予測値も変わります。
住宅ローンや資産運用を考える際は、「長期金利は必ず3%を超える」「今が最高で今後は必ず下がる」など、一方向の予測だけを前提にしないことが重要です。
家計で確認したい長期金利上昇への備え
住宅ローンをこれから借りる場合
- 固定型と変動型の両方で返済額を試算する
- 金利が1~2%上がっても返済を続けられるか確認する
- 金融機関の表示金利だけでなく、手数料や団体信用生命保険も比較する
- 借入可能額ではなく、無理なく返せる金額を基準にする
- 頭金を出しすぎて生活予備資金が不足しないようにする
変動型住宅ローンを返済中の場合
- 現在の適用金利と基準金利を確認する
- 次回の金利見直し時期を確認する
- 返済額の見直しルールを契約書で確認する
- 繰上返済後も緊急資金を残せるか確認する
- 固定型への借換え費用を含めて比較する
変動型住宅ローンの一部には、金利が上がっても返済額を5年間変えないルールや、見直し後の返済額を前回の125%以内に抑えるルールがあります。しかし、すべての住宅ローンに適用されるわけではありません。
返済額が抑えられても、利息の割合が増えて元金の減り方が遅くなる可能性があります。契約している金融機関のルールを確認してください。
預金や債券を保有している場合
- 定期預金の満期前解約条件を確認する
- 長期間の定期預金へ資金を集中させない
- 債券を満期前に売却する可能性があるか考える
- 債券の残存期間と価格変動リスクを確認する
- 高い利回りだけでなく発行体の信用力も確認する
よくある質問
長期金利とは10年国債利回りのことですか?
厳密には、長期金利は返済期間が1年を超える資金の金利を表す広い言葉です。ただし、日本では新発10年国債利回りが代表的な指標として使われるため、ニュースでは両者がほぼ同じ意味で使われることがあります。
長期金利は土日や祝日にも動きますか?
国内の国債市場が休場している間は、通常の国内取引に基づく価格更新は行われません。ただし、海外金利、為替、政治・経済ニュースは動いているため、次の取引日に価格が大きく変化する場合があります。
長期金利が上がると変動型住宅ローンもすぐ上がりますか?
必ずしもすぐには上がりません。変動型住宅ローンは、主に短期金利や金融機関の基準金利を参考に決められます。ただし、日銀の利上げが続けば、変動型の適用金利にも影響する可能性があります。
長期金利が上がると預金金利も同じだけ上がりますか?
同じ幅では上がりません。預金金利は、政策金利、銀行の資金需要、他行との競争などによって決まります。金融機関ごとに引上げ時期や幅が異なります。
長期金利が上がると日経平均は必ず下がりますか?
必ず下がるわけではありません。高い成長期待が株価に反映された企業や不動産関連企業には負担となる場合がありますが、銀行や保険会社には収益改善要因となることがあります。企業利益、景気、為替なども株価を左右します。
金利上昇時に国債を買うと必ず利益が出ますか?
利益は保証されません。購入後に金利がさらに上がれば、保有する国債の市場価格は下落する可能性があります。満期前に売却する場合は、購入価格を下回ることがあります。
現在も日銀には長期金利の誘導目標がありますか?
2024年3月にイールドカーブ・コントロールが終了したため、以前のような固定的な10年国債利回りの誘導目標はありません。2026年7月31日午前の確認時点では、短期金利である無担保コール翌日物金利を1.0%程度にする方針が、直近の金融市場調節方針です。
まとめ|長期金利は住宅ローン・預金・株価をつなぐ重要指標
長期金利とは、一般に1年を超える期間の資金に適用される金利で、日本では新発10年国債利回りが代表的な指標です。
2026年7月30日の財務省公表値では、10年国債金利は2.801%でした。2019年末のマイナス金利から大きく上昇し、2026年7月には約29年ぶりの高水準となる場面もありました。
長期金利が上昇すると、新規の固定型住宅ローンや企業の長期借入れには負担が生じやすくなります。一方、預金者や新たに国債・社債を購入する側は、以前より高い利回りを得られる可能性があります。
株式市場では、成長株や不動産関連株の負担となる場合がある一方、銀行や保険会社には収益改善要因となることがあります。日経平均が必ず同じ方向へ動くわけではありません。
日銀は2024年3月に長期金利の直接的な誘導政策を終了し、現在は短期金利を主な政策手段としています。今後の長期金利は、日銀の政策金利、国債買入れ、物価、賃金、財政、海外金利などを反映して変動すると考えられます。
長期金利を確認するときのチェックリスト
- 表示されている金利の基準日と更新時刻を確認したか
- 新発10年国債と理論上の10年金利を区別したか
- 公的な確定値と取引時間中の市場データを区別したか
- 住宅ローンが固定型か変動型か確認したか
- 金利上昇後の返済額を試算したか
- 債券価格と金利が反対方向へ動くことを理解したか
- 金利だけで株価や為替の方向を決めていないか
- 複数の金利見通しを比較したか
本記事は一般的な情報提供を目的としており、住宅ローン、預金、国債、社債、株式その他の金融商品を勧誘・推奨するものではありません。金利や市場価格は変動し、元本割れや返済負担増加が生じる可能性があります。契約・取引前には最新の契約条件、手数料、リスクを必ずご確認ください。
<参考サイト> 日本銀行 / 財務省 / 住宅金融支援機構 / 金融庁 / 金融経済教育推進機構(J-FLEC) / 日本相互証券 / 日本証券業協会 / 日本経済研究センター / ロイター / 楽天証券 / Investing.com / Unsplash




