自社株買いとは?メリット・デメリット、株価への影響、取得枠・消却・税金・ROE・ルールまで徹底解説

「自社株買いが発表されると株価は上がるの?」「取得枠を発表したのに実際には買わないこともある?」「自社株買いと消却は何が違う?」「税金や仕訳はどうなる?」など、自社株買いには分かりにくい点が数多くあります。自社株買いは株主還元や資本効率向上の手段として利用されますが、発表だけで株価上昇が保証される制度ではありません。この記事では、2026年8月28日時点で確認できる会社法、日本取引所グループ、金融庁、国税庁、企業会計基準委員会などの情報をもとに、自社株買いの仕組みからメリット・デメリット、最新の銘柄情報を確認する方法、非上場会社の場合まで分かりやすく解説します。

自社株買いや株式市場をイメージした株価チャート

この記事の目次

  • 自社株買いとは何か
  • 自社株買いを行う主な理由
  • メリットとデメリット
  • 自社株買いが株価・EPS・ROEへ与える影響
  • 自社株買いのルールと取得枠
  • 「発表したのに買わない」はあり得るのか
  • 最新の自社株買い銘柄を確認する方法
  • 自社株買いと消却の違い
  • 自社株買いの仕訳
  • 株主側の税金
  • 非上場会社の自社株買い
  • インサイダー取引との関係
  • 自社株買いの英語表現

自社株買いとは?会社が自分の株式を取得すること

自社株買いとは、株式会社がすでに発行している自社の株式を株主や市場から取得することです。法律や会計の文脈では「自己株式の取得」と呼ばれます。

上場会社の場合、東京証券取引所の通常の立会市場で買い付ける方法のほか、終値取引のToSTNeT-2、自己株式取得専用のToSTNeT-3などを利用する方法があります。

ToSTNeT-3は買い手を自己株式を取得する発行会社に限定した立会外取引です。企業が前営業日の終値などを基準として、まとまった自己株式を取得する際にも利用されています。

「自社株買い」と「自社株」は意味が違う

会社が株式を取得する行為が「自社株買い」であり、取得後に会社自身が保有している株式は自己株式と呼ばれます。

買い付けた自己株式は必ずすぐ消滅するわけではありません。会社が保有を続けたり、一定の手続きを経て処分したり、消却したりすることができます。

企業はなぜ自社株買いをする?代表的な理由

企業によって目的は異なりますが、自社株買いの開示資料では、主に次のような理由が示されます。

  • 株主還元を充実させるため
  • 資本効率を高めるため
  • 経営環境の変化に対応した機動的な資本政策を行うため
  • 余剰資金を株主へ還元するため
  • 株式報酬などに利用する自己株式を確保するため
  • M&Aや組織再編など将来の資本政策へ利用するため

ただし、自社株買いの目的は会社ごとに異なります。実際の判断では「自己株式の取得に係る事項の決定に関するお知らせ」など、会社自身が公表した資料の「取得を行う理由」を確認することが重要です。

自社株買いのメリットとは?

メリット1.1株当たり利益が上昇する場合がある

自社株買いによって自己株式が増えると、1株当たり当期純利益(EPS)の計算で使う株式数から自己株式が控除されます。

たとえば、利益が10億円、EPS計算上の株式数が1,000万株なら単純化したEPSは100円です。同じ利益のまま株式数が900万株になれば、EPSは約111円になります。

ただし、これは利益が変わらないと仮定した場合の計算上の効果です。自社株買いをしたこと自体が本業の利益を増やすわけではありません。

メリット2.ROEが上昇する場合がある

ROE(自己資本利益率)は、企業が株主資本を使ってどれだけ利益を生み出したかを見る代表的な指標です。

一般に、ROEは次の考え方で計算されます。

ROE = 当期純利益 ÷ 自己資本 × 100

日本の会計基準では、取得した自己株式は資産としてではなく、取得原価を純資産の部の株主資本から控除して表示します。このため、ほかの条件が同じなら自己資本が小さくなり、ROEが計算上高くなることがあります。

メリット3.株主還元の選択肢になる

配当と並び、自社株買いも株主への資金還元策として利用されます。会社が市場から株式を買い付ければ、売却する株主には現金が渡り、買付後に市場に残る株式数は相対的に少なくなります。

配当は基準日時点の対象株主へ広く金銭を支払いますが、市場での自社株買いでは売却した株主だけが直接代金を受け取ります。この点は両者の大きな違いです。

メリット4.余剰資金の活用方法になる

事業運営や将来投資に必要な現金を確保したうえで余剰資金がある場合、自社株買いが資本配分の選択肢になることがあります。

ただし、現金を使う以上、設備投資、研究開発、M&A、負債返済などとの比較が必要です。

自社株買いのデメリット|「実施すれば良い」とは限らない

デメリット1.会社の現金が減る

市場から株式を買い戻すには資金が必要です。大規模な自社株買いを行えば、その分だけ会社の手元資金が減少します。

将来の設備投資や研究開発、事業買収などに多額の資金が必要になった場合、自社株買いに使った資金は利用できません。

デメリット2.高い価格で買い戻すと資金効率が悪くなる可能性がある

株価が企業価値に比べて高い局面で大量の自己株式を取得した場合、結果として会社資金を効率的に利用できなかったと評価される可能性があります。

重要なのは、自社株買いの金額だけではなく、成長投資や財務健全性も含めた資本配分全体です。

デメリット3.ROEやEPSの改善が本業の成長とは限らない

株式数や自己資本が減ることでEPSやROEが改善しても、売上や営業利益そのものが伸びているとは限りません。

財務指標を見る際には、営業利益、営業キャッシュフロー、売上成長率など本業の実績も確認する必要があります。

デメリット4.株価上昇は保証されない

自社株買いの発表後に株価が上昇するケースはありますが、自社株買い=株価上昇という決まりはありません。

業績悪化、市場全体の下落、金利や為替の変化、取得規模が市場の期待を下回る場合など、さまざまな要因によって株価は下落することもあります。

特に注意したいのが「1,000億円の自社株買いを発表=必ず1,000億円買う」という誤解です。取得枠には重要な意味があります。次ページでルールと最新情報の見方を確認しましょう。